輸血後GVHDについて 

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輸血後GVHDとは?

<定義>
 組織適合性のない2者間で輸血が行われた場合に、輸血血液に混入したドナーのリンパ球が受血者を非自己と認識し受血者体内で増殖して拒絶反応(graft vs. host)を示すことがある。これに伴って生じる病態を輸血後GVHDという。

<症状>
 輸血後1〜2週で発熱・紅斑(macropapular rash)をもって発症、更に肝障害・下痢・汎血球減少が進行、これに伴い出血・感染症がみられる。一旦発症すると死亡率は90%以上であり、有効な治療法は確立されていない。

<原因>
 血液に混入したリンパ球(特にCD8リンパ球)による。(1)免疫不全状態にあり輸血されたリンパ球を拒絶し得ない場合、(2)全く健康であっても輸血されたリンパ球を拒絶できないHLAの組み合わせがある場合(患者のHLA haplotype の homozygote であるドナーから供血される時)、の2つのケースが考えられる。後者の確率は日本人では1/600と試算されており、無視できないくらい高い。

輸血後GVHDの危険因子
 1.全血製剤、特に新鮮血を使用したとき
 2.担癌患者
 3.男性(約7割)
 4.高齢者(50才以上に多い)
 5.新生児・未熟児(小児科症例約25%)
 6.開心術・開胸術時の輸血
 7.近親者間輸血

輸血後GVHDの予防
 1.全血輸血、特に新鮮血の使用は避ける。
 2.可能である限り自己血輸血を行う。
 3.近親者間輸血を避ける。
 4.血液製剤に放射線照射を行う。

 








輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドラインV(要旨)

平成22年1月1日 日本輸血学会輸血後GVHD対策小委員会

「1」輸血後GVHDの病態と原因
    1. 輸血後GVHDの病態
      重篤な輸血合併症であり、有効な治療法はない。
      発症後は、ほぼ全例が致死的な経過を辿っている。
      発症予防が唯一の対策である。
    2. 輸血後GVHDの原因と危険因子
      (1)HLA一方向適合(HLA one-way match)(2)免疫不全状態(3)その他
      血縁者(親子、兄弟)からの血液は、HLA一方向適合になる可能性が高い。
「2」輸血後GVHD予防の基本方針
    1. 新鮮凍結血漿を除く全ての輸血に際しての血液に対する放射線照射
    2. 緊急輸血時の対応
    3. 院内採血輸血の回避
    4. 自己血輸血の推進
    5. 予防のための院内体制整備

「3」輸血後GVHD予防のための放射線照射

    1. 輸血用血液の放射線照射の適応と対象となる輸血用血液
      新鮮凍結血漿を除く全ての輸血用血液にリスクがあり、照射の対象となる。
      (全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、顆粒球濃厚液、新鮮液状血漿)
    2. 放射線照射線量
      血液製剤の全ての部分に対して15Gy以上−50Gy未満の範囲内で照射する。
    3. 放射線照射済みの血液の扱い
      カリウム値の上昇に注意(新生児・腎不全患者の輸血、急速大量輸血等)