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福井大学子どものこころの発達研究センター


Age2企画

発達障がいの臨床像を呈する愛着障害などの小児のトラウマ関連障害の脳画像研究

 この研究では、母子間の愛着形成のゆがみにより引き起こされる愛着障害や、小児の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の神経基盤を明らかにすることを目的にしています。特に、愛着障害児の呈する多動・衝動性障害に注目し、早期診断・治療を可能にする目的で、脳画像、脳生理科学、行動学の手法により多面的に障害児脳を解析します。さらに一連の研究成果に基づき、患児たちの問題行動の根底にある神経発達障がいの生物学的な関与を明らかにして、一連の症状との関連を検討することで「小児期愛着障害の発症にいたるメカニズム」を理解し、同疾患の多動・衝動性障害に対する神経科学的基盤に立脚した予防法・治療法を開発します。これらの研究は、あいち小児保健医療総合センター、理化学研究所分子イメージング科学研究センター、生理学研究所大脳皮質機能研究系、浜松医科大学子どものこころの発達研究センターと共同で行っています。

fMRIを用いた注意欠陥多動性障害(ADHD)における報酬系の神経基盤に関する研究

 注意欠陥多動性障害(ADHD)は主に不注意や多動性、衝動性を主症状とする発達障がいです。これらの症状を有し、学校や家庭における日常生活に支障をきたしている場合、ADHDとの診断が確定します。つまり、症状の存在と機能障害に着目して、診断と治療を行うことになります。ADHDは7歳未満に発症することが知られており、学童期の子どもが中心の疾患です。大規模な疫学調査によれば、児童のADHDの発症頻度は5~15%程度といわれ、決して稀な障害というわけではなく、その診断と治療法の確立が望まれています。

 特に、学童期のADHDにおいては報酬系の障害による報酬遅延や報酬への感受性、ならびにドパミン神経系の異常が認められています。また、報酬系の問題は将来非行に至る場合の予測因子となることが指摘されているため、早期の対応が必要です。しかしながら、現状のADHD治療においては、症状の軽減で治療の終結と考えられているケースが多く、報酬系の問題については多くの場合、医学的観点からも見過ごされています。そのため、ADHDの病態と報酬系の機能低下の生物学的な関連を示し、医学的介入の有用性を示す必要があります。また、投薬によるドパミン神経系の改善効果は、PET(Positron Emission Tomography)を用いたドパミントランスポーターまたはレセプターの分子イメージングにより評価可能ですが、非侵襲性であるfMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)を用いて報酬課題遂行中の線条体、側坐核、眼窩前頭野などの報酬系関連脳領域における報酬獲得時の神経賦活度により、間接的に評価することも可能と考えられます。
 そこで、私たちはADHD治療薬の投薬前後の報酬系の脳神経基盤をfMRより評価し、その治療効果の検証研究を進めています。
 現在、ADHD患者さんに対するADHD治療薬によるフォローアップ研究を、熊本大学大学院生命科学部小児発達学分野および医用基礎科学分野、理化学研究所分子イメージング科学研究センターと共同で行っています。

(図の説明)患児では、高い報酬課題遂行時(図1)には正常所見ですが、低い報酬課題遂行時(図2)に両側の視床の賦活度が有意に低いことを私たちはいち早く突き止めました。

注意欠陥多動性障害(ADHD)におけるドパミン関連遺伝子の多型解析と治療反応性(治療効果)との関連性に関する研究

 小児のADHD発症とドパミン関連遺伝子(ドパミントランスポーター遺伝子DAT1やドパミン受容体D4遺伝子DRD4など)の多型について解析し、その成果を本症の予防・治療法の開発に応用することを目的としています。そのため、神経学的評価(神経学的診察所見、神経心理学的検査、高解像度MRIP300脳波による神経生理学的検査、自律神経機能検査)を行い、ドパミン関連遺伝子多型と神経生理学的データ、および他の臨床データとの関連、治療経過との関連など、様々な角度からの検討を行っています。病因・病態を考慮したADHDの治療反応性予測と難治性ADHDの客観的診断法が開発されれば、不必要な長期投与や、それに伴う小児の成長や発達、内分泌機能への影響も避けられます。

広汎性発達障害(特にアスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム)におけるオキシトシンおよびバソプレシン受容体の遺伝子多型と社会性との関連に関する研究

 従来、オキシトシ(OXT)は出産・授乳を調節するホルモンであり、またバソプレシン(AVP)は利尿作用の低下や血管収縮に作用するホルモンであるとされてきました。しかし近年、両者は“愛情”や“信頼”など社会性の形成にも関わるホルモンであることが明らかになってきています。さらに、これらのホルモンが社会的なコミュニケーションに問題を抱える自閉症スペクトラムとも関連があることが分かってきました。私たちは、オキシトシンやバソプレシンなど向社会的な行動(prosocial behavior)や人間関係の構築に関与するとされるホルモンに注目し、遺伝的多型が生み出すホルモン受容体(OXTRやAVPR1a)の差異による「ホルモンの働きにくさ」という遺伝的要因と、「社会性」という行動的要因の関連性について検討する研究を、長崎大学神経機能学分野、中国ハルビン医科大学児童思春期科と共同で行っています。

 この他にも、以下のような研究を行っています。

SSRIの児童・青年期大うつ病性障害に対する有効性および安全性の臨床評価(東京医科歯科大学難治疾患研究所分子疫学分野との共同研究)

Neuronal Activity Topography解析による臨床検査法の確立(熊本保健科学大学医学検査学科との共同研究)

中枢性鎮咳薬「アスベリン」の抗うつ作用に関する研究(熊本大学環境分子保健学分野との共同研究)

児童虐待に代表される小児期のストレスが脳発達におよぼす影響と敏感期の解析(日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究)

児童のストレスが精神的症状・健康に及ぼす影響とレジリエンシー精神的弾力性に関連する要因の検討に関する研究




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