診療科(部)名 第一内科
診療科(部)長名 上田孝典
研究責任医師名 津谷 寛
「難治性B細胞リンパ腫に対するリツキシマブ処理末梢血幹細胞を用いた自家造血幹細胞移植併用の超大量化学療法」
中・高悪性度非ホジキンリンパ腫の化学療法において、現在の標準的治療法とされているCHOPをはじめとする初回化学療法では、完全寛解率は60%〜80%であり、長期の無病生存率は30%〜50%にとどまり、残りの50〜70%の患者に対しなんらかのサルベージ療法が必要となる。しかしながらこれらの再発症例において、これまでに報告されている通常量のサルベージ化学療法では10%以下の症例にしか長期生存は望めず、サルベージ療法により一定の効果が得られた症例に自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を実施することにより、ようやく30%程度の長期生存が期待される。自家末梢血幹細胞移植は大量の抗癌剤による造血細胞の消滅を防ぎ、大量療法を可能にした支持療法であるが、最大の欠点としては移植細胞中の腫瘍細胞の混在があげられる。腫瘍細胞が混在していると再発の危険性が当然高くなるので、移植細胞中の腫瘍細胞を除去する方法を開発することが可能であれば、さらに多くの患者が長期生存できるものと考えられる。
リツキシマブはヒトB細胞性表面抗原であるCD20抗原に対するキメラ型マウスモノクローナル抗体である。CD20抗原は細胞膜貫通型蛋白で、機能としてカルシウムイオンチャンネル活性に影響して細胞周期を調節するといわれ、preB細胞と形質細胞を除くB細胞の細胞膜表面に発現し、B細胞性リンパ腫細胞ではえ約90%に表現されている抗原である。本抗原に対するIgG抗体であるリツキシマブはB細胞性リンパ腫を細胞介在性細胞障害作用antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity(ADCC)、補体依存性細胞融解作用complement-dependent cytotoxicity(CDC)、あるいは直接的にアポトーシス誘導により破壊することが可能な薬剤である。リツキシマブはCD20抗原陽性細胞に特異的に働くのでCD20抗原が発現していない血液幹細胞は障害されないので、移植細胞に混在している腫瘍細胞を除去できる可能性が考えられる。すでに体外(ex vivo) での使用による臨床試験がVolpesら(Haematologica 85;31,2000)、Hutchinsら(HSANZ Abstracts, Annual Scientific Meeting, 1999)により報告されているが、安全性に関してはいずれも単独例の報告であり、発展させるためにはさらなる検討が必要である。
悪性リンパ腫に対するリツキシマブのex vivo処理法を用いた自家造血幹細胞移植併用の大量化学寮法の安全性を確認する。
上記治療法の抗腫瘍効果をみる。
1.CD20抗原陽性B細胞性リンパ腫。
2.標準的化学療法によりCR、CRuと判定された後に再発した症例、化学療法がPR以下の効果にとどまった症例。
3.サルベージ療法によりPR以上の効果が得られた症例。ただし、50%以上の腫瘍縮少効果が認められるが4週以上の奏功期間が確認できない例を対象としても良い。
15歳以上65歳以下。
1.Performance Status:0〜2(軽労働はできないが、身のまわりのことはでき、日中の50%以上は起居している。
2.HBs抗原、HCV抗体、HTLV-1抗体、HIV抗体がすべて陰性。
1.好中球数2,000/μl、血小板数15.0 x 104/μl
2.GOT、GPT正常の2倍以下、総ビリルビン値正常
3.血清クレアチニン正常
4.PaO2 80mmHg以上
5.左室駆出率 60%以上
本臨床試験への参加を文書により同意した症例。
1.妊婦・授乳婦および妊娠の疑いがある症例
2.重症の精神障害を有する症例
3.活動性感染症を有する症例
4.コントロール不良の糖尿病を有する症例
5.心筋梗塞の既往がある症例
6.降圧剤による治療中の症例
7.生ワクチンまたは弱毒性ワクチンを使用している症例
8.免疫抑制剤を使用している症例
9.脾腫がある症例
エトポシド(VP-16) 400mg/sqm/day di 3
h day 1-4
G-CSF 10μg/kg/day
sc day 10-
採取実施日:末梢白血球数が nadir に達した後に1万を超えた翌日か翌々日
採取細胞数:CD34 陽性細胞総数として2x106個/kg以上
リツキシマブ 375
mg/sqm/day day
1, (22〜)
デキサメサゾン(DEX) 40 mg/body/day day 3-5
キロサイド(Ara-C) 2
g/sqm/day day
3-5
メルファラン(L-PAM) 180 mg/sqm/day day 5
1.
Day5に実施する。
2.
採取移植細胞を37℃で速やかに溶解し、遠心洗浄を行う。
3.
採取移植細胞にリツキシマブ100mgおよび患者血清20mL、RPMI1640培養液80mLを加え30分間室温にて放置する。
4.
RPMI1640培養液にて遠心洗浄後に投与する。
5.
なお、移植細胞をex vivoで処理できない場合はday 22〜に
リツキシマブ 375
mg/sqm/dayの投与を行う。
正確な診断のために鼠径部のリンパ節や縦隔、腹腔の針生検はできるだけ避ける。生検体の凍結保存
病理診断:国際分類に基づく
遺伝子診断:IgH, TCRβ
免疫染色 :T-cell、B-cell分類(CD45RO(UCHL1), CD20(L26)必須, CD3, CD45(LCA))
理学所見:全身状態(PS、B症状)病変部位の部位、数、大きさ、性状等
画像所見(腫瘍病変の2方向径を必ず記載すること)
胸部単純X腺写真(断層は必要に応じて)
胸部、腹部、骨盤部CT(頭頚部に腫瘍がある場合は同部のCT)
ガリウムシンチ
骨のMRI、骨シンチ、骨X-P等を必要に応じて行う
骨髄生検または穿刺
その他:CNS浸潤の疑われる症例は髄液検査を施行する。
一般身体検査
心肺機能検査 :胸部X線、心電図、心エコー、血液ガス
血液学的検査 :CBC, WBC分類、凝固系検査
血清学的検査 :CRP
ウイルス学的検査 :HBs, HCV, HTLV-I, HIV, VDRL, TPHA
生化学検査 :肝、腎、筋、脂質、血糖スクリーニング
検尿
JH/BCL2キメラ遺伝子増幅
自他覚症状における病変
副作用項目:発熱、感染、悪心、下痢、皮疹(毎日)
検尿(エンドキサン投与時は6 時間ごと)
血液学的検査(移植後は好中球数500 /µLをこえるまで毎日)
血清生化学検査 (移植後day14までは毎日、以後主治医が必要と判断したとき)
心電図、血液ガス (主治医が必要と判断したとき)
JH/BCL2キメラ遺伝子が存在する場合は同遺伝子の増幅
CR:腫瘍がすべて消失し、腫瘍による異常所見が全て消失し、4週以上持続した場合
PR:50%以上(一方向のみでは30%以上)の縮少がみられているが、腫瘍が消失しないで4週間以上継続している状態
NR:PR未満の効果(MR:25%以上の縮少がみられている状態)
PD:最大腫瘍径の測定結果の合計において少なくとも25%以上の増大、もしくは新病変が出現した場合
NCI副作用判定基準に従う。
症例 4症例
期間 承認日より平成13年3月31日まで
当研究はヘルシンキ宣言およびGCPを遵守して実施されるべきであるため、説明および文書による同意を前提とする。
なお、リツキサンの適応がない患者に関しては1回目の投与は国費負担申請を、2回目は自費購入する。
殿
「難治性B細胞リンパ腫に対するリツキシマブ処理末梢血幹細胞を用いた自家造血幹細胞移植併用の超大量化学療法」
福井医科大学附属病院第一内科
担当医____________________
はじめに
この試験に参加されるのはあなたの自由です。十分な検討の上で参加されるかどうかを決定して下さい。この試験への参加をお断りになっても、参加された後に途中でおやめになることも全く自由です。その場合でも担当の医師はあなたの治療に関し最善を尽くしますのでなんら不利益を被ることはありません。
試験の目的及び方法
あなたの病気は悪性リンパ腫です。これまで受けられた標準的な抗腫瘍剤による治療法では十分な治療効果が認められませんでした。治癒を目指すためには自家造血幹細胞移植を併用した大量化学寮法が必要と考えられます。
本試験はリツキシマブという悪性リンパ腫に対する抗体を用いて移植細胞中に混在している腫瘍細胞を除去する方法を用いた自家造血幹細胞移植併用の大量化学寮法の安全性を確認する試験です。治療手順として (1) 初めに化学療法後にrhG-CSFを投与し末梢血に造血幹細胞を動員・採取します。造血幹細胞を多く含んだ血液100mL程度(体重あたり2
x 106個以上の造血幹細胞を含む)を凍結保存します。(2) 次にリツキシマブと大量の抗腫瘍剤を投与し腫瘍細胞の根絶を目指します。(3)造血幹細胞を移植することにより大量化学療法の結果生じた骨髄の障害を速やかに回復させます。この中には造血幹細胞以外にも腫瘍細胞が含まれているため、(a)あらかじめ輸血バックにリツキシマブとあなたの血清を用いて腫瘍細胞を破壊するか、または(b)リツキシマブを治療開始22日頃に投与し体内にある腫瘍細胞を破壊するよう試みます。
予期される効果と副作用
腫瘍細胞を少なくすることによりこれまで達成できなかった以上の治療効果とその持続が期待されます。
大量抗癌剤の投与による副作用として肝機能障害、腎障害、貧血、血小板減少、白血球減少があります。リツキシマブ投与時には異物反応、すなわちショック、皮疹、発熱、血清病が起こることが知られています。両薬剤の投与により好中球・リンパ球が高度に減少するため細菌、真菌、ウイルスなどに易感染性となります。移植に際しては、細胞を処理・凍結する際に使用した薬剤によりショック、発熱がみられることがあります。こうした副作用は予防薬の投与、無菌室への入室などの適切な処置である程度予防可能です。重篤な副作用をさけるために心臓、肝臓、腎臓など重要な臓器の障害が著しいと判定された場合、または十分な造血幹細胞の保存ができなかった場合この治療は行いません。
当該疾患に対する他の治療法の有無及びその内容
リツキシマブを用いない大量化学療法を考慮していきます。
試験に同意しない場合であっても不利益を受けないこと
この試験への参加をお断りになっても担当の医師はあなたへの治療に関し最善を尽くしますので、あなたはなんら不利益を被ることはありません。
試験に同意した場合でも随時これを撤回できること
この試験へ参加された後に途中でやめることも全く自由です。その場合でもあなたの治療に関し最善を尽くしますので、不利益を被ることはありません。
その他被検者の人権の保護に関して
この試験に参加されるのはあなたの自発的な意志によるものですから、試験についてわからないことや心配なことについては何でも担当の医師に遠慮なく相談して下さい。あなたのプライバシーを十分尊重し、細心の注意の下で試験は進められます。また、あなたを含む多くの患者さんから得られた貴重な有効性や安全性のデータは集計されてから、学術論文等に発表する場合があります。ただしあなたの名前が外部に漏れるようなことはありません。
最後に
この試験への参加を十分な検討のうえ、この試験に参加される場合には下記に署名捺印をして担当の医師にお渡し下さい。
なお、リツキシマブの購入は当方でしますが、1回目の投与の薬剤代金は患者側で負担していただき、2回目の投与分は当方で負担します。代金の支払いは福井銀行福井医大支店(店番号143 口座番号1093190)福井医大一内化療班(福井医科大学第一内科化学療法研究班)にお振り込みください。
福井医科大学医学部付属病院院長 斎藤 等殿
「難治性B細胞リンパ腫に対するリツキシマブ処理末梢血幹細胞を用いた自家造血幹細胞移植併用の超大量化学療法」の臨床研究に参加するにあたり
1)目的及び方法
2)予期される効果及び危険性
3)当該疾患に対する他の治療法の有無及びその内容
4)被験者が治験への参加に同意しない場合でも不利益は受けないこと
5)被験者が治験への参加に同意した場合でも随時これを撤回できること
6)その他被験者の人権の保護に関し必要な事項
7)費用の負担
以上のことに関して担当医師より十分に説明を受けて理解したうえで、本研究に参加することを同意します。
平成 年 月 日
住所 患者氏名
印
法定代理人等(続柄 ) 印
平成 年 月 日
福井医科大学医学部附属病院
斎藤 等 院長殿
診療科(部)名 第一内科
診療科(部)長名 上田孝典 印
研究責任医師名 津谷 寛 印
医薬品等の臨床研究について、下記により実施したいので申請します。
記
1 研究課題 難治性B細胞リンパ腫に対するリツキシマブ処理末梢血幹細胞を用いた自家造血幹細胞移植併用の超大量化学療法
2 医薬品等名 リツキシマブ
3 研究の目的 リツキシマブのex vivo処理法を用いた自家造血幹細胞移植併用の大量化学寮法の安全性の確認。
内 容 B細胞性悪性リンパ腫に対する抗体リツキシマブを用いて移植血液細胞中に混在している腫瘍細胞を除去する方法を用いた自家造血幹細胞移植併用の大量化学寮法の安全性を確認する
4 研究予定期間 平成 年 月 日から 平成15年3月31日まで
5 予定症例数 5症例
6 添付資料 (1)「医薬品等臨床研究計画書」
(2)「医薬品等臨床研究申請説明書」
(3)「医薬品等臨床研究審査説明資料」
診療科名 第一内科
診療科長 上田孝典
研究責任医師 津谷 寛
「難治性B細胞リンパ腫に対するリツキシマブ処理末梢血幹細胞を用いた自家造血幹細胞移植併用の超大量化学療法」
腫瘍細胞が混在していると再発の危険性が当然高くなるので、移植細胞中の腫瘍細胞を除去する方法を開発することが可能であれば、さらに多くの患者が長期生存できるものと考えられる。
B細胞性悪性リンパ腫に対する抗体リツキシマブを用いて移植血液細胞中に混在している腫瘍細胞を除去する方法を用いた自家造血幹細胞移植併用の大量化学寮法の安全性を確認する。なお、移植血液細胞に抗体を入れることができないくなる場合は、移植後に再びリツキシマブを全身投与する。
腫瘍細胞を少なくすることによりこれまで達成できなかった以上の治療効果とその持続が期待される。
大量抗癌剤の投与による副作用として肝機能障害、腎障害、貧血、血小板減少、白血球減少がある。リツキシマブ投与時には異物反応、すなわちショック、皮疹、発熱、血清病が起こることが知られている。両薬剤の投与により好中球・リンパ球が高度に減少するため細菌、真菌、ウイルスなどに易感染性となる。移植に際しては、細胞を凍結する際に使用した薬剤によりショック、発熱がみられることがある。
リツキシマブのex vivo処理法を用いた自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法の安全性の確認。
別紙の臨床試験計画書にて説明
自家末梢血幹細胞移植は大量の抗癌剤による造血細胞の消滅を防ぎ、大量療法を可能にした支持療法であるが、最大の欠点としては移植細胞中の腫瘍細胞の混在があげられる。腫瘍細胞が混在していると再発の危険性が当然高くなるので、移植細胞中の腫瘍細胞を除去する方法を開発することが可能であれば、さらに多くの患者が長期生存できるものと考えられる。
リツキシマブはCD20抗原陽性細胞に特異的に働くのでCD20抗原が発現していない血液幹細胞は障害されないので、移植細胞に混在している腫瘍細胞を除去できる可能性が考えられる。すでに体外(ex vivo) での使用による臨床試験がVolpesら(Haematologica
85;31,2000)、Hutchinsら(HSANZ Abstracts, Annual Scientific Meeting, 1999)により報告されているが、安全性に関してはいずれも単独例の報告であり、発展させるためには本研究は有用である。
下記の事項に関して説明し、文書を用いて同意を得る。
本臨床研究の目的と方法
予想される効果及び有害事象
当該疾患に対する他の治療方法の有無およびその内容
本研究への参加を同意しない場合でも不利益を受けないこと
本研究への参加を同意した場合でも随時撤回できること
その他患者の人権の保護に関し必要な事項