SIRSに伴う急性肺傷害ガイドライン

 血液疾患を治療するうえで、時に感染症や急激な腫瘍崩壊から全身性炎症反応症候群(SIRS)をきたし、呼吸不全を呈することがある。急速に進行する肺の異常陰影、呼吸状態の悪化がおこり、死亡率が非常に高い。

 原因としては感染症が多く、特にカリニ肺炎、グラム陰性菌によるEndotoxemia、グラム陽性菌の外毒素(TSSTなど)、真菌(CandidaAspergillusなど)、サイトメガロウイルスなどが引き金となりやすい。また頻度は低いがマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、嫌気性菌、抗酸菌なども考慮する必要がある。

 抗菌治療のfirst lineは、疑いのある病原体全てをcoverするように行い、培養・血清学的検査の結果から否定された病原体に対する治療を中止する。

検査

  1. 血液培養、喀痰培養(一般細菌、抗酸菌)、胸部レントゲン、心エコー

  2. カリニ(喀痰PCRβ-Dグルカン)

  3. 真菌(β-Dグルカン、GeniQ アスペルギルスPCR、クリプトコッカス抗原)

  4. 血中エンドトキシン

  5. 白血球中CMV抗原、CMV抗体

呼吸管理

肺傷害スコア

スコア

観察項目

0

1

2

3

4

PEEP(cmH2O)

0

15

68

911

12

PaO2/FiO2

300

225299

175224

100174

100

胸部X線所見

異常陰影無し

異常陰影1/4

異常陰影2/4

異常陰影3/4

異常陰影4/4

肺コンプライアンス*

80

6079

4059

2039

19

非挿管下でのFiO2概略値

経鼻カニューレ 酸素マスク
酸素流量 (l/min 吸入気酸素濃度(%) 酸素流量 (l/min 吸入気酸素濃度(%)
12 2428 68 3545
35 2835 810 4555
69 3545 1012 5565
1015 4550    

治療

  1. ST合剤

  1. 抗真菌剤

  1. 抗生剤

i)    チエナム0.5g×2V  30分で点
 生食 120ml     12

ii)   MRSAを含めグラム陽性菌が疑わしい場合は以下を併用する
塩酸バンコマイシン
0.5g×2V  1時間で点滴
生食 100ml          12 12時間毎
(高齢者や腎障害を有する者では減量する。投与23日目に血中濃度を測定し以後の投与量を調節する)

    iii)    異型肺炎がうたがわしい場合は以下を併用する
           
ミノマイシン100mg  30分で点滴
            生食 
100ml      12

4  抗ウイルス剤

            デノシン500mg×1/2V  1時間で点滴
            生食 
100ml       12

 

5  献血ヴェノグロブリンIH 2.5g×2V  11回 3日間点滴

 

6  エラスポール4.8mg/kg   24時間持続点滴(単独ルートで)
   
   生食 500ml        14日間まで

 

7  ステロイドパルス

         ソルメドロール500mg×2V  11回 2時間で点滴
   
     ソリタT3 200ml       3日間

           以後2日ごとに半量に減量する。

年齢・病態に応じてhalf dose pulseでも可