ごあいさつ
着任2年目
教授:菊田 健一郎2009年4月に着任後、早一年以上が経ちました。福井県民の方々の優しい人柄、同門のご温情、優れたスタッフに恵まれ、大きなトラブルなく初年度を終えることができたことを心より感謝申し上げます。
昨年度の総括
2009年の教室手術数は前年度の2割増しとなりました。私自身は脳動静脈奇形(AVM)/未破裂脳動脈瘤や巨大動脈瘤/もやもや病などの脳血管障害、ならびに聴神経腫瘍/三叉神経鞘腫/頭蓋咽頭腫/脊髄腫瘍など深部脳脊髄腫瘍の手術を担当しました。AVMについては、新たに専門外来を開設しました。未破裂動脈瘤クリッピング術ではICG血管撮影と電気生理学モニタリングをルーチンで行っており、一例も大きな合併症を出さず、全員社会復帰されています。麻酔科の先生方のご尽力により単心房単心室患者さんの脳動脈瘤手術も成功し、松果体部AVMでは当大学初めての座位手術も行いました。幸いにして、昨年手術を受けていただいた患者さんの98%が社会復帰、職場復帰されておられます。本年度もできるだけ多くの患者さんに治っていただけるよう「臨床第一」の精神で努力してまいりたいと存じます。
技術の進展
この1年で新型顕微鏡が2台導入され5-ALAによる腫瘍蛍光造影やICGによる術中蛍光血管撮影をルーチンに行うことが可能となりました。もともとある術中CTのシステムにナビゲーションシステム組み合わせ、脳のシフト補正を行うリアルタイムナビゲーションが可能となりました。CTやMRI、PETなどの画像情報もネットワーク化され、CDなどの物理メディアを用いる必要がなくなりました。手術映像はすべでフルハイビジョンで記録再生され、その高精細な画像は手術学習の効率を格段に高めています。これらの技術的進展により、より迅速に・より確実に、より安全に手術をすることが可能となりました。
また、特に悪性神経膠腫の分野において、大阪医科大学の宮武伸一准教授のご高配によりメチル化MGMTのPCRが開始され化学療法に生かせるようになりました。8大学共同研究による、ほう素中性子補足療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)も動き始めました。未だ難敵である悪性神経膠腫に対して新たな武器を手にすべく日々努力を続けています。
低侵襲治療の推進
くも膜下出血や頸動脈狭窄症に対しては血管内治療を積極的に行っています。くも膜下出血に対しては開頭手術による動脈瘤頚部クリッピング術ではなく、血管内治療によるコイル塞栓術を第一選択として行っています。現時点で成績良好であり、今年度以後もこの方針を継続したいと考えています。頸動脈狭窄症に対する外科治療としては、頚動脈内膜剥離術と頸動脈ステント留置術がありますが、そのどちらとも症状がでるような合併症はゼロでした。現在、ステント留置術を第一選択とし、内膜剥離術はステント困難例に行う方針としています。
若い力
新たに山内貴博医師が入局しました。大変多忙であるにも関わらず、一年先輩の東野医師とともに夜ごとラットの血管吻合練習を頑張っています。脳内出血、頭部外傷に対しては彼ら若手が夜間緊急手術に奮闘し、救命できる症例が増加しています。先日、列車に跳ねられ、頭部だけでなく胸部〜骨盤に重症多発外傷を負った患者さんが救命され、元気に回復する様を見せられました。若い力の強力な底力を感じました。彼らの将来に大変期待しています。
地域連携
本年度は福井県脳卒中協会支部長、脳卒中連携協議会会長の重責を拝命しました。地域医療連携講座講師の山村修先生、福井大学臨床教授として学生教育にもご尽力いただいております、済生会病院の宇野先生、県立病院の木多先生、藤沢先生、東馬先生などの諸先生方と協力し、福井県の脳卒中診療の発展に努力して参りたいと存じます。
大学病院としてのこれから
大学病院の使命は、高度医療を提供すること、市中一線病院の先生方・医療スタッフの方々と連携を行うこと、そして学術活動で世界と勝負すること、と考えております。これからも初年度に掲げた、①患者第一、②脳だけでなく脊髄末梢神経まで、③臨床と研究の両立、そして④教育の充実をモットーに努力していく所存です。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

スタッフ