研究業績
研究業績
研究概要(2007)
人口非密集地域における安全で質の良い全身麻酔の開発
研究概要
人口非密集地域において、必要な症例に必要な外科的処置が必要な時に施行されるためには、安全で質の良い全身麻酔が容易に経済的に随時に提供されなくてはならない。一方、現在の医療体制において手術が必要な場合、医学的にも社会的にも麻酔科専門医の存在が不可欠な条件となっている。しかるに、僻地や過疎地など人口非密集地域に麻酔科専門医を随時に派遣することは、人的にも経済的にもできない状況である。そこで、麻酔科専門医でなくとも全身麻酔の実行が可能となることを目的としてその開発研究を行った。このような麻酔では、麻酔科学の専門知識を必要とする術前評価および麻酔計画については麻酔科専門医がかかわるが、全身麻酔に伴う医療行為そのものは、できるだけ基本的で単純な医療行為で構成されるようにし、麻酔の実行には専門医の関与を少なくするようにする必要があると考えられる。
業績年の進捗状況
まず、全身麻酔に麻酔科専門医が必要である医学的な理由を解析した。次に、現代の科学技術によって麻酔科専門医の技能が代替できるか検討した。さらに、その安全性と良質性を検討し、実際に医学的に安全に質良く機能するか試行した。その結果、高機能な人工呼吸器を搭載した麻酔器を配備し、生体情報モニターを整備し、症例に応じて麻酔関連薬剤の効果を客観的に評価して数値化し、定型的なスケールを用いて循環や呼吸および薬剤追加投与量や間隔などを管理すれば、麻酔科専門医が関与する部分を飛躍的に削減できることが明らかとなった。しかし、複数の症例を同時に監督指導する麻酔科専門医は必要であることが確認された。加えて、少数の麻酔科専門医が複数の症例を管理するために必要な監視システムの構築の必要性が示された。従来の麻酔方法では、麻酔中に薬剤効果等を滴定し調節して投与するのでその評価および判断に専門医の知識・技能を必要とした。しかし、研究開発中の本法は個々の症例に応じた全身麻酔を術前に詳細に計画しそれを実行するので「テーラーメード麻酔」と呼ぶことができる。今後、事前に麻酔薬投与量を的確に判断するために必要な項目を検討し、精度良く術中麻酔管理ができるようにさらに研究を重ねる必要があると考えられる。現在のモニタリング装置では、観測時点での測定値の異常を警告することしかできないが、平成21年3月の手術室および集中治療室モニタリング装置更新に際して、自動麻酔記録器に保存されたデータから経過を解析して、観測時点での現状を分析し、ある程度予後を予測するシステムを構築中である。また、医学的な根拠が確立される見通しが確認された時点で、社会的な了解を得るための方策も同時に検討する予定である。
急性および慢性疼痛における新しい疼痛治療薬の開発
研究概要
痛みは、通常の生理的な痛みである侵害受容性疼痛と、神経損傷に伴う難治性の神経因性疼痛、および心因性疼痛に分類される。本研究では、侵害受容性疼痛と神経因性疼痛の原因として重要な役割をもつ、神経成長因子(NGF)とその高親和性受容体のTrkAの情報伝達を阻害する新しい疼痛治療薬の開発が目的である。治療薬は合成ペプチドを使用し、TrkAのチロシンキナーゼ活性を抑制する可能性がある分子構造を設計して作成している。研究の手法は、まず様々な合成ペプチドの中から、TrkA活性を抑制するものをin vitro実験で選択し、細胞培養実験でその効果を確認する。その後、動物の疼痛モデルにおける疼痛抑制効果を調べ、他のキナーゼとの相互作用を調べるプロファイリングや、毒性についても検討を加える。最終的にはヒトでの疼痛治療を目的とするものである。
業績年の進捗状況
TrkAの活性化ループに相同なアミノ酸配列をもつペプチドに、細胞膜透過性促進ペプチドであるTatペプチドを結合させた合成ペプチドを数種類作成した。リコンビナントTrkAとTrkAを発現するPC12細胞を用いて、TrkA活性を有効に抑制するものを検討した結果、1つの合成ペプチドを選択することができた。今後は、動物における侵害受容性疼痛モデルや神経因性疼痛モデルを作成し、本ペプチドの疼痛抑制効果を検討する。
重症患者管理における最適な早期抗凝固療法、血糖調節法およびβブロッカーの投与方法の開発
研究概要
①重症患者管理において、感染症コントロールは重要な位置を占め、いったん重症感染症からDICやMOFに陥るとその救命率は著しく低下する。このように、凝固系と炎症は相互に密接な関わりを持っていることが明らかになりつつあり、抗凝固薬と抗炎症因子の組み合わせによるDIC治療の治験が進行中である。
②厳密な血糖コントロールが重症患者の救命率を向上させることが報告されてきており、重症患者管理と血糖およびインシュリンとの関係についての研究が進行中である。
③周術期に頻脈を予防し、厳密に心拍数をコントロールすることにより、術後の生存率が有意に向上することが明らかになってきた。非心臓手術の術後に対するアドレナリンβ受容体拮抗薬(βブロッカー)の投与の効果について、多施設合同で研究が進行中である。
業績年の進捗状況
①DICの治療における抗凝固薬と抗炎症因子の同時投与の有用性について多施設合同研究に参画し、データの収集を行うと同時に常に最新情報が得られるような体制を構築した。
②重症患者の血糖コントロールについて、基礎的知見の収集のため、米国ハーバード大学医学部集中治療部に部員を派遣している。約2年間で、情報収集のみならず、問題解決方法についても知識と技術を修得する予定である。
③周術期のβブロッカーの有用性について、医師主導の治験を遂行する予定である。すでに多施設合同カンファレンスに参加し、プロトコールを作成した。現在は、院内における治験開始に向けて、倫理委員会の承認手続きの申請書を作成中である。
④集中治療室内で得られるデータの数を増加させることにも貢献すると考えられるが、集中治療室内増床についても検討中である。
より詳しい研究概要および業績についてはこちらへどうぞ
http://www1.fukui-med.ac.jp/home/ufms/file/kenkyu/welcome.html