福井大学医学部附属教育支援センター

留学体験記

いざ、ロシア

(医学科 6 年(派遣時))
(H29.5.20~H29.6.17 海外卒前臨床医学実習、イルクーツク州立医科大学(ロシア)に留学)

 卒前臨床研修として、ロシアのイルクーツク州立医科大学の関連病院の脳神経脊髄外科で1ヶ月の実習を行ってきました。研修先を見つけるにあたっては、公募で受け入れが可能な海外の病院を独自に探したり、先輩や先生方から話を聞いて福井大学として前例がありコネクションもある大学を探したりしました。
 今回はラッキーなことに、急遽ではあったものの福井大学脳外科の菊田教授、北井准教授のコネクションもありイルクーツクで快く受け入れて頂きました。
 ロシア人の特に若い研修医はそこまで英語ができるわけではありませんので、基本英語での実習ですが自然とロシア語も覚えていきました。内容については普段のポリクリと変わらないような朝カンファレンスへの参加、手術見学(3Dメガネでテレビ越しに見学できるのでなかなか見ごたえがあります)、回診への参加、医局で少し質問されたりなどをしつつ、午後からは希望した内容の実習を受けることができました。手術手技練習、学会参加、中国人留学生との交流や、私が居た時期に丁度アメリカからいらしていた生物工学の先生の研究室で研究するなど、タイミングに恵まれてこそできたことも多くありました。とにかく積極的に何ができるか聞いたり、あれをしたいこれをしたいと言えば付き合ってくれるいい先生ばかりです。礼を失くさずに、しかし遠慮なく要望を提示することはこの実習では特に大切でした。
 宿泊は大学寮の少しいい部屋を無料で貸し出していただき、広々とした部屋で快適に過ごせました。研究室の先生と4人ほどでよくご飯を食べに行ったりして、食事代はほとんどかかりませんでした。たまに一人で食事をするときも、ご飯を買って帰りたいといえば研修医の先生が安くて美味しいテイクアウトの店に案内してくれるので困りませんでした。
 日本でポリクリをした後にロシアで初めて手術見学をした時の衝撃は忘れられません。手術室は3階にあり、朝は手術室の窓から外の青い空が見えて本当に綺麗でした。夏場なので暑いからなのか少し開いている窓からはまるで雪のような白樺の花粉が時たま風に煽られほんの僅かに入ってきました。手術を受けるのは大抵若い方でしたが、術後に感染が滅多に起こらないと聞くとやはり「おそロシア」と思わずにはいられませんでした。手術は設備や作法なんかもわずかに日本と違い、その理由を聞くと歴史から教えてくれます。日本とは違うルーツを持っているんだなと実感しました。
 実習を終え、ロシアの最先端とは言わずとも発達した医療技術に感銘を受けました。ロシアでは医療費がタダです。しかし先端医療やロシアで作っていない薬なんかは輸入して使う分には自由ですが個人負担になるそうです。そのため、ベーシックながらも洗練された技術がコストパフォーマンスを高め、ひいては患者の命を救うことになります。医師のプロフェッショナリズムとは最新の知見で最善の結果を出すことのみではないと強く感じました。