福井大学医学部

学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)

医学部医学科では,大学の理念及び医学部の理念・教育目的・人材育成目標に基づき,医学科生が卒業時に達成すべき学修成果を「アウトカム」(3項目)として掲げ,それらを達成するために6年間で修得すべき能力を「コンピテンシー」(大領域8項目,小領域36項目)として設定しています。

所定の期間在学し,カリキュラム・ポリシーに沿って設定した授業科目を履修し,履修規定で定められた卒業に必要な単位・時間数を修得し,知識・技能・態度の評価において,コンピテンシーで定められた能力を修得しアウトカムを達成したと認めたものに学位を授与します。

アウトカム

  1. 医療人としての態度
    生命尊重を第一義とする倫理観・責任感と,良識ある人間性を有し,医療チームの構成員として,共感力とコミュニケーション力を備えた患者中心の医療を実践できる。
  2. 医療人としての知識・技能
    医療における高度専門職業人として,医学及び関連領域の知識と技能を応用して,科学的根拠に基づいた適切な医療活動を実践できるとともに,日々進歩する医学的知識・技能を,生涯に渡って学修することができる。
  3. 医療人としての地域性・国際性
    地域(とくに福井県)の社会的ニーズを踏まえた地域医療を実践できるとともに,グローバルな視点に立って医療の国際化に貢献できる。

コンピテンシー

(1) 医の倫理とプロフェッショナリズム
生命尊重を第一義とする倫理観を持ち,医療における高度専門職業人としての責任感・価値観を有し,礼節ある態度・良識と,自己の心身管理能力をもって行動できる。

(2) 人間性の形成とコミュニケーション
人間性の基盤となる教養的知識を有し,患者中心医療のための共感と尊重に基づく人間関係構築と適切なコミュニケーションを実践することができる。

(3) チーム医療
医療に関わる人々の役割を認識・理解し,医療チームの構成員として,医師同士・多職種者と協力・連携することができる。

(4) 医学及び関連領域の知識と問題解決能力・生涯学習
医学の基盤となる基礎・臨床・社会医学等の知識を持ち,疾患の病因・病態等の理解に応用できる。そのために,自ら学ぶ意欲を持ち,問題を解決し,生涯に渡って学修する能力を有する。

(5) 診療の実践と患者ケア・医療安全
医学知識に基づいた基本的臨床手技を用いて,患者に敬意を示しつつ,苦痛や不安感に配慮した効果的かつ安全な診療を,指導医の指導・監督のもとで実施できる。

(6) 科学的思考
科学的根拠に基づいた医療実践のため,医学における科学的研究の意義を理解し,情報の収集と評価のための論理的・批判的思考ができる。

(7) 医療の社会性と地域医療・国際的視点
医師の社会的役割を理解し,保健・医療・福祉の資源活用による疾病予防と健康増進,地域事情に即した医療への貢献とともに,グローバルな視点に立って医療の国際化に貢献できる。

(8) 福井医療力
福井県の社会的ニーズを踏まえて,救急医療や緊急被ばく時に対応可能な医療を実践できる。また,福井大学医学士として,後輩等への教育・指導ができる。

各アウトカム達成に必要な能力をコンピテンシー大領域として定め,各大領域のもとにさらに具体的な能力としてコンピテンシー小領域を設定しています。
コンピテンシー小領域,アウトカムとコンピテンシーの対応は,別表「医学科アウトカム・コンピテンシー対応表」に示します。

(別表)医学科アウトカム・コンピテンシー対応表

アウトカム1 医療人としての態度
生命尊重を第一義とする倫理観・責任感と,良識ある人間性を有し,医療チームの構成員として,共感力とコミュニケーション力を備えた患者中心の医療を実践できる。
コンピテンシー(1) 医の倫理とプロフェッショナリズム
生命尊重を第一義とする倫理観を持ち,医療における高度専門職業人としての責任感・価値観を有し,礼節ある態度・良識と,自己の心身管理能力をもって行動できる。
使命感 確立した使命感を持ち,責任感を持って行動できる。
倫理観 医療における倫理的問題を理解し,倫理的原則に基づいて行動できる。
医療法制 医療法制を理解し,医療における法的責任・規範を遵守できる。
礼儀とマナー 適切な身だしなみや言動,社会のルールやマナー,常識に従って,礼節ある態度・行動をとることができる。
自己管理 自己の時間,健康,衛生等を管理できる。
多様性 患者とその関係者の心理・社会的背景を理解し,多様性を受け入れることができる。
コンピテンシー(2) 人間性の形成とコミュニケーション
人間性の基盤となる教養的知識を有し,患者中心医療のための共感と尊重に基づく人間関係構築と適切なコミュニケーションを実践することができる。
一般教養 人間や社会,科学に関する教養的知識を有し,豊かな人間性の形成に努めることができる。
共感力 人の行動と心理の基本を理解し,相手の立場に立って考え,話を聴き,尊重と思いやりの心を持って,他者に共感することができる。
コミュニケーション力 コミュニケーションの基本を理解し,患者とその関係者と信頼関係を築き,協力が得られるコミュニケーションを実践できる。
プレゼンテーション力 修得した知識や情報,自身の意見を明確にプレゼンテーションでき,質問に的確に応えることができる。
コンピテンシー(3) チーム医療
医療に関わる人々の役割を認識・理解し,医療チームの構成員として,医師同士・多職種者と協力・連携することができる。
チーム医療 医療チームの構成員として,メンバーと協調性を持って良好な人間関係・チームワークを築くことができる。
多職種連携実践 医療チームに関わる各職種の役割を認識・理解し,互いに尊重して適切にチーム医療を実践することができる。
アウトカム2 医療人としての知識・技能
医療における高度専門職業人として,医学及び関連領域の知識と技能を応用して,科学的根拠に基づいた適切な医療活動を実践できるとともに,日々進歩する医学的知識・技能を,生涯に渡って学修することができる。
コンピテンシー(4) 医学及び関連領域の知識と問題解決能力・生涯学修
医学の基盤となる基礎・臨床・社会医学等の知識を持ち,疾患の病因・病態等の理解に応用できる。そのために,自ら学ぶ意欲を持ち,問題を解決し,生涯に渡って学修する能力を有する。
基礎科学 自然科学・行動科学・社会科学の知識を修得し,基礎・臨床・社会医学の理解に応用できる。
基礎医学・社会医学 基礎医学・社会医学の基本原理を理解し,知識を修得,臨床医学の理解に応用できる。
臨床医学 主要な疾患について,疫学・病因・病理・病態・症候・予後を説明できる。
主要な疾患について,治療法を説明できる。
自己学修・問題解決 自ら知識や情報を修得し,それをもとに問題の抽出,思考,解決ができる。
生涯学修 日々進歩する医学的知識・技能を,生涯に渡って学修する能力を有する。
コンピテンシー(5) 診療の実践と患者ケア・医療安全
医学知識に基づいた基本的臨床手技を用いて,患者に敬意を示しつつ,苦痛や不安感に配慮した効果的かつ安全な診療を,指導医の指導・監督のもとで実施できる。
病態聴取 患者の主要な病歴を正確に聴取できる。
身体診察・基本的臨床手技 身体診察と基本的臨床手技を適切に実践できる。
検査 主要な疾患の診断に必要な検査計画を立て,得られた結果を解釈できる。
診断 主要な疾患の病態を把握し,診断を確定することができる。
治療計画 患者の診断・病態に基づいた適切な治療計画を立てることができる。
医療文書・医療プレゼンテーション 診療録など医療文書を適切に作成し,プレゼンテーションできる。
説明と同意 患者に検査や治療について説明でき,同意を適切にとることができる。
医療安全 医療安全の知識を持ち,患者及び医療者の安全を優先した医療を実践できる。
コンピテンシー(6) 科学的思考
科学的根拠に基づいた医療実践のため,医学における科学的研究の意義を理解し,情報の収集と評価のための論理的・批判的思考ができる。
科学的研究 科学的研究の理論・方法論を理解し,科学的根拠に基づく論理的・批判的思考ができる。
科学的探究心 医療における問題解決のための科学的な探究心を持つ。
医学英語力 科学的知識,医学知識を論文等から修得できる英語力を持つ。
アウトカム3 医療人としての地域性・国際性
地域(とくに福井県)の社会的ニーズを踏まえた地域医療を実践できるとともに,グローバルな視点に立って医療の国際化に貢献できる。
コンピテンシー(7) 医療の社会性と地域医療・国際的視点
医師の社会的役割を理解し,保健・医療・福祉の資源活用による疾病予防と健康増進,地域事情に即した医療への貢献とともに,グローバルな視点に立って医療の国際化に貢献できる。
予防・健康 保険・医療・福祉に関わる施設・職とその役割を理解し,それらと連携することで,疾病予防・健康増進に貢献できる。
地域医療 地域社会のニーズに対応した医療が実践できる。
国際的視点 異文化・異社会を理解できる国際的な感性と言語力を有し,グローバルな視点で医療活動ができる。
コンピテンシー(8) 福井医療力
福井県の社会的ニーズを踏まえて,救急医療や緊急被ばく時に対応可能な医療を実践できる。また,福井大学医学士として,後輩等への教育・指導ができる。
福井医療事情 福井県の医療事情を把握し,説明できる。
救急医療 救急医療に対応可能な総合医として実践できる。
緊急被ばく医療 緊急被ばく時に医療対応ができる。
教育力・指導力 後輩等に医学の知識・技能・態度に渡る教育・指導ができる。