福井大学医学部は、1980年に高瀬武平を初代学長として福井医科大学として開学しました。開学当初は永平寺町の片田舎に、ポツンと一軒家さながら、講義棟と管理棟だけが立っていたようです。まさにゼロからのスタートでしたが、歴代学長の能勢善嗣、梶川欽一郎、鳥塚莞爾、須藤正克のもと着実に発展を遂げ、1983年には附属病院が開設し、1997年には看護学科が設置されました。大学周囲も様々な施設ができ、医大村として賑やかになりました。2003年には福井大学と統合し、伊藤春海を初代医学部長とする福井大学医学部となりました。眞弓光文、上田孝典、山口明夫、内木宏延、藤枝重治と歴代6人の医学部長の尽力により、福井大学医学部は小粒でもきらりと光る地方大学として臨床、教育、研究のあらゆる面で成長しました。これまでに医学科からは約4000名の医師が、看護科からは約1500名の看護師が誕生し、私で医学部長は7代目となります。
福井大学医学部は分子イメージング研究を推進する高エネルギー医学研究センター、発達障害の分子基盤を研究する子どものこころの発達研究センターに加え、近年ではがん、アレルギー、血管分野で新進気鋭の教授、研究者をお迎えしています。日夜、世界的な研究が行われ、成果発信がなされており、今後はさらに、医工教連携研究、データサイエンスを推進してまいります。またラトガース、オタワ、アイルランガ大学など国際交流も再加速します。
福井大学医学部では「愛と医術で人と社会を健やかに」を理念とし、国際認証評価に認証されたカリキュラムに基づき、アウトカム基盤型教育を実践しています。前述したように基礎教室の教授やスタッフは全国から選ばれた一流研究者揃いですが、本学ではこれらの教員が解剖実習など専門教育を1年生から行います。教員の学生愛、教育熱は熱く、試験は厳しいです。やる気のある学生は早期から基礎教室で研究に参加しています。大学院早期履修制度や基礎配属でも一流の研究に触れることができます。3年生でCBT、PreOSCEに合格した学生は4年生から附属病院での病院実習(クリニカルクラークシップ)が始まります。臨床教室の教授も日本でも指折りのドクター揃いであり、学生を待ちかまえています。実際の実習では福井大学で開発されたF-CESS、F-CESSナースという学生用電子カルテを用います。本物の医師、看護師さながらにカルテに所見を記載し、症例や手技を経験し、教員との資料のやり取り、レポートなども全てF-CESS上で行います。不十分なカルテ記載には教員から厳しい指導がチャットに書き込まれます。独自開発のITを駆使した教育を行い、集められた教育データをカリキュラム改善に活かします。結果の一つして、2024年度の医師国家試験、看護師試験は合格率100%、全国一位を獲得しました。
福井大学医学部に入学した学生諸君には、自然あふれる松岡キャンパスで、勉強だけではなく、運動、文芸、社会活動など様々なことを経験し、充実したキャンパスライフを送っていただきたいと考えています。そして、教職員一丸となって、優れた医師、看護師、医学者に成長していけるよう環境を整え、指導いたします。
関係各位の皆様におかれましては、福井大学医学部へのこれまで以上のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
令和7年5月2日 医学部長 菊田健一郎