本学が以下のプレスリリースを行いました。
多くの大腸がんでは、APC遺伝子注8の変異によりβ-cateninタンパク質の量が増加します。増加したβ-cateninは、がんの根源となるがん幹細胞を生み出す遺伝子群の発現を誘導することで、大腸がんの発症を促し、段階的に悪性化すると考えられています(図1)。福井大学医学系部門医学領域の青木耕史教授らは、β-cateninがPAF1複合体などを介してRNA Pol II注9を活性化することにより、がん幹細胞関連遺伝子群の発現を誘導することなどを2024年に明らかにしました(図2:青木等、Oncogene 2024)。
これまでの研究から小腸や大腸の上皮細胞の発生注10や恒常性注11の維持に不可欠な転写因子として働くCDX1とCDX2が大腸がんの悪性化に関わる可能性が示唆されていました。しかし、その直接の実験的証明はなく、またその機序も未解明となっていました。本研究では、動物(マウス)モデルを用いてCDX1/2が相加的に協調して大腸がんの悪性化を抑制することを初めて明らかにしました。さらに、その機構としてCDX1/2が協調的にβ-cateninによるPAF1複合体の活性化を介した遺伝子発現を抑制することや、大腸がんのがん幹細胞性を抑制することを明らかにしました(図1)。
本研究により、大腸がんの根源となるがん幹細胞性を誘発する遺伝子発現や悪性化を抑制するブレーキのひとつの機構が明らかになりました。
本研究成果は、英国科学誌「Cell Death & Disease」に2025年5月21日に掲載されました。
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青木 耕史
福井大学 医学系部門医学領域 生命情報医科学講座 薬理学 教授
https://r-info.ad.u-fukui.ac.jp/Profiles/8/0000728/profile.html