血管形成の制御機構が明らかになるに伴い、単純な血管の「管」を作ることや壊すことは容易になりつつあります。しかしながら、機能的な血管の高次構造が形づくられる機構や、血管がもつ潜在的な機能には未知なる領域が多く残されています。我々は血管の真なる姿を理解して統御することによる新しい疾患治療法の開発を目指し、以下の研究プロジェクトを進めます.
血管新生阻害剤への治療抵抗性の克服
腫瘍血管を阻害することで癌の増殖を兵糧攻めにて抑制して治療するという「血管新生阻害剤」は、副作用が少ない画期的な薬剤として研究・開発が進められてきました。しかしながら、臨床においては期待されていたような治療効果が得られていないのが現状です。この課題に対して、「血管束移動」という新しい血管形成機構を切り口に革新的な治療薬の開発を目指して研究を進めています。
アンジオクライン血管学の創生
生体内に隅々にまで張り巡らされた血管網は、酸素と栄養分の「輸送路」であることが一般的に知られています。最近では、この機能に加えて「組織の司令塔」として生体恒常性維持に働いていることが明らかになりつつあります。このような「組織の司令塔」の実態を担っているのが、血管内皮細胞に由来して周辺の細胞群に作用するアンジオクラインファクターと呼ばれる分子群です。疾患の発症・進展過程でもアンジオクラインファクターが働いているのではと考え、研究を展開しています。