福井大学医学部

歯科口腔外科学

研究内容紹介

基礎的研究

1)放射線性口腔粘膜炎に対するヒストン脱アセチル化阻害剤(HDAC阻害剤)の粘膜炎抑制効果の基礎的研究
2)培養口腔粘膜組織を用いたin vitroにおける組織為害性試験モデルの開発
3)頭頸部癌に対する増殖因子受容体の分解機構を応用した治療の検討

臨床研究

1)口腔癌におけるFDG-PETと組織学的因子の検討
2)唾液腺多発癌に関する臨床的研究
3)CT画像解析ソフトウェアと顎骨実体模型を用いた顎骨関連手術のシミュレーションに関する研究
4)顎口腔腫瘍切除再建症例へのインプラントの応用
5)下顎骨垂直骨切り術後の顎位変化と顎関節の術後安定性に関する研究
6)口腔癌切除後のPGAシートとフィブリン糊を併用した被覆の有用性についての検討

主要研究テーマ

基礎的研究1.放射線性口腔粘膜炎に対するヒストン脱アセチル化阻害剤(HDAC阻害剤)の粘膜炎抑制効果の基礎的研究

[研究概要]
顎口腔領域の悪性腫瘍治療で行われる放射線照射治療では、副作用として放射線性口腔粘膜炎が必発し、治療に苦渋することが多い。これは治療により直接粘膜細胞のDNAが損傷を受ける他に、核内のヒストンやプロモーターの転写活性へも障害が生じる、いわゆるエピジェネシスによるものと考えられる。このエピジェネシスの治療法としてヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤が期待されている。HDAC阻害剤は不活性化している腫瘍抑制因遺伝子の転写再活性化とガン原遺伝子の転写抑制作用を有すると共に、放射線・化学療法剤で破壊されたDNAの修復を促進させる機能があり、化学的シャペロンと言われている。本研究では、HDAC阻害剤の一つであるトリコスタチンAが放射線誘発口腔粘膜炎の抑制に、どの程度効果を示すかを、無血清培地で培養した単層培養口腔粘膜上皮細胞を用いて、炎症性サイトカインの産生、粘膜上皮細胞のDNA損傷に伴う修復過程の変化を分子生物学的に調べている。

[キーワード]
放射線性口腔粘膜炎, HDAC阻害剤, 無血清培地, 口腔粘膜上皮細胞

基礎的研究2.培養口腔粘膜組織を用いたin vitroにおける組織為害性試験モデルの開発

[研究概要]
抗癌剤や外用薬、化学物質等の効果・毒性試験では、従来単層培養(Monolayer cell culture)やマウス・ラット等の小動物実験が用いられてきた。しかし、単層培養試験では、組織と違い大部分の細胞が同じ機能を有しているため、細胞1つ1つのデータをとる場合は有効であるが、それをあたかも体組織として擬似した上での実験では結果に無理が生じる事が多分にある。またマウス・ラット等の小動物を用いて行った細胞毒性試験の研究では、まとまった数の実験検体が統計的に必要となるが、闇雲に動物を大量に使ってデータを取ることは、実験者としてのモラルを問われる時代になってきている。また、同じ哺乳動物とはいえ、まったく種が異なるマウス・ラットのデータが人間に当てはまらないことも多い。本研究では単層培養細胞システムを用いず、無血清培地上で培養した三次元培養口腔粘膜を用いて、毒性試験や発癌試験に応用するための研究である。三次元培養組織を用いた場合、単層培養の利点(再現性があり、特定の細胞のみのデータが得られる)と、動物実験での利点(単層培養で得られたデータが実際に生体でどのように再現されるか)を同時に得る事が可能であり、より生体に近い状況で研究を行うことが出来る。

[キーワード]
In vitro, 三次元培養口腔粘膜, 無血清, 発癌試験, 毒性試験

基礎的研究3.頭頸部癌に対する増殖因子受容体の分解機構を応用した治療の検討

[研究概要]
上皮増殖因子受容体や血小板由来増殖因子受容体は、頭頸部癌を含めた様々な腫瘍において高度に発現が認められ、近年それらをターゲットとする分子標的薬の治療開発や有用性が報告されている。我々はこれまでに増殖因子受容体の蛋白分解機構に効果を示す物質を発見し、細胞レベルでの増殖抑制効果について検証し報告している。今後分子レベルでの作用機序を明確にするとともに、その機序を応用した治療の有効性について検証していく予定である。

[キーワード]
頭頸部癌,上皮増殖因子受容体,血小板由来増殖因子受容体, 蛋白分解機構

臨床研究1.FDG-PETデータを用いた口腔癌の予後判別

[研究概要]
現在までに、口腔癌治療においてFDG-PETデータにより放射線併用動注化学療法の治療効果の予測や治療後の残存腫瘍の有無の検討を行ってきた。今回、口腔扁平上皮癌症例において糖代謝能と腫瘍血管形成についてFDG-PETデータおよび組織学的因子を用いて検討を行った。

[キーワード]
歯と口腔の腫瘍, 歯と口腔の疾患の治療, 口腔癌

臨床研究2.唾液腺多発癌に関する臨床的検討(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科との共同研究)

[研究概要]
WHO分類(1991年)に基づいて診断された唾液腺多発癌の部位、頻度、癌組織型などについて国内外の文献的検討を行い、その発現様式の解明を行っている。

[キーワード]
唾液腺腫瘍, 免疫組織化学, 腫瘍増殖能

臨床研究3.CT画像解析ソフトウェアと顎骨実体模型を用いた顎骨関連手術のシミ ュレーションに関する研究

[研究概要]
口腔外科領域では、腫瘍・炎症の治療で顎骨を離断する事が多い。その後の顎骨再建では、レントゲン写真やCT画像のみで大凡の再建量を把握し手術に望むことが多い。しかし、この方法では再建量の不足や形態の複雑さが、術中に判ることもあるために、医師の手術経験による治療成績の差が大きい。
本研究では、CT撮影後のDICOMデータを用い、コンピュータソフトでその再建範囲と形態を視覚的にとらえるのと同時に、石膏顎骨実体模型を用いてソフトのデータを有機的にリンクさせ、術前にその切除範囲・再建量および形態を把握して効率的な手術を行えるようにするための研究である。また同時に、経験の少ない医師に対しても、術前に病変の状態を視覚的に理解させることで、安全で確実な手術治療を行うための、教育システムとしての研究でもある。

[キーワード]
コンピュータソフト, 顎骨実体模型, シミュレーション

臨床研究4.顎口腔腫瘍切除再建症例へのインプラントの応用

[研究概要]
顎口腔腫瘍切除症例では、手術により歯や歯を支える骨の欠損を生じ、術後に咀嚼困難となる場合が多くみられる。これに対し、良好な咬合機能を得るための骨移植およびインプラントによる咬合再建法について検討を行っている。

[キーワード]
歯と口腔の疾患の治療, 骨移植, インプラント, 咬合再建

臨床研究5.下顎骨垂直骨切り術後の顎位変化と、顎関節の術後安定性に関する研究

[研究概要]
顎変形症患者に対する外科的矯正治療では、近年下顎骨垂直骨切り術が盛んに行われている。この方法は、従来の矢状分割術と比べて下歯槽神経の損傷が無いこと、顎関節症を有する患者に適用できること、手術時間が非常に短い等の長所が挙げられる。下顎骨垂直骨切り術では骨片を固定しないために、術後顎関節の前下方への移動、いわゆるSagが一時的に生じるが、このSagが術後の顎位変化にどのような影響を及ぼすかについては、未だ議論されているところである。本研究は、この顎関節の術後移動変化と、顎位の変化について長期間にわたり観察し、検討することである。

[キーワード]
下顎骨垂直骨切り術, 顎関節,顎位

臨床研究6.口腔癌切除後のPGAシートとフィブリン糊を併用した被覆の有用性についての検討

[研究概要]
高齢者における口腔癌治療においては、より低侵襲で安全な手術法の確立が望まれる。比較的表在性の腫瘍の切除後には、創部に植皮や人工真皮の貼付と固定が行われるが部位によっては固定が困難であり、その適用が難しい。我々は近年報告されている吸収性組織補強剤であるPGAシートとフィブリン糊を併用し,術後に固定の必要のない処置についてその有効性を検証中である。

[キーワード]
口腔癌,再建,吸収性組織補強剤,フィブリン糊

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