福井大学医学部

分子生命化学(化学)

研究内容紹介

主要研究テーマ

分子模型教材の開発と実践普及活動

初等中等教育から大学教育まで幅広く活用が期待されるポインター方式分子模型教材の改良改善を図り、新しい教材開発と実用化を目指している。
ポインター方式分子模型はすでに特許化された新技術であり、また、ディンプル・ソケット方式分子模型は特許出願し、こどもから大人まであらゆる層の化学教育教材として有用である。

環境省絶滅危惧ⅠA(CR)アベサンショウウオの生息調査と環境保全

アベサンショウウオは両生類のなかで最も絶滅が危惧されている。兵庫から石川の日本海沿岸の極限られた地点での生息が確認されているにすぎない。絶滅を防ぐため、新規生息地調査とともに、既存の生息地の環境保全、特にカエルツボカビ症、メタセルカリア感染症等の被害状況調査に取組んでいる。
福井県嶺南で初めてとなる生息地を発見した後、あらたな生息地の発見はない。一方、福井県ではカエルツボカビ症の侵入がはじめて確認された。広く両棲類の生存環境の悪化が懸念される。また、メタセルカリア症など寄生虫による感染症の発症が大きな問題となり、サンショウウオ類への感染の広がりを調査中で、福井県下のサンショウウオ4種すべてで感染が確認された。今後の伝染の経路の解明と保全対策の立案が課題である。

溶血性レンサ球菌毒素NADase阻害剤(SNI)の分子機構

溶血性レンサ球菌感染症は日常的に見られるものである。レンサ球菌は補酵素NADを分解するNADaseを分泌し、SLOを介して宿主細胞へ送り込む。細胞内に送り込まれたNADaseにより、補酵素NADの枯渇を招いて細胞障害をもたらす。レンサ球菌はSNIを同時発現してNADaseの菌体内での活性を完全に封じ込めている。このSNIのNADase阻害機構を分子レベルで解明し感染治療薬の開発を目指している。

パエニバチルスフクイネンシスキトサナーゼ・キチナーゼの性質

福井の伝承農法を裏付ける土壌細菌パエニバチルス・フクイネンシスは、カニ殻などのキチンキトサンを栄養源として生育する。そのため、キトサナーゼ・キチナーゼを分泌する。植物病原菌のカビ類の細胞壁成分もキチン質であり、フクイネンシスのバイオ農薬としての活用が期待される。

種特異的クリスタリンの分子進化

動物の眼のレンズ・水晶体を構成する構造タンパク質をクリスタリンという。脊椎動物には、α、βおよびγ‐クリスタリンが共通のクリスタリンとして発現している。そして、種に特異的なクリスタリン:種特異的クリスタリンの発現が見られる。例えば、アヒルやニワトリにはε‐クリスタリンが、カメにはτ‐クリスタリンが、アカガエル科のカエルにはρ‐クリスタリンが、アマガエルにはζ‐クリスタリンが、そして無脊椎動物のイカにはS-クリスタリンが、という具合に種に特異的なクリスタリンが発現し、生物種の特徴のひとつとなっている。これらの種特異的クリスタリンは、遺伝子重複や遺伝子シェアリングにより、既存の酵素タンパク質を流用している。例えば、ρ‐クリスタリンは糖尿病性合併症を誘発するアルドース還元酵素を、ζ‐クリスタリンはキノン還元酵素を流用している。
生物種の系統分類に応用できる新しいクリスタリン分類学の確立を目指したい。

生物多様性と外来種

アベサンショウウオをはじめ福井には希少な野生動植物の宝庫となっている。しかし、ブラックバスやブルーギルなどの外来種問題は他県同様に生物多様性を脅かす深刻な問題である。ウシガエルやアメリカザリガニなどは特に多く福井固有の生態系の破壊が懸念される。
福井県で初めてとなる外来種カダヤシの生息を確認した。水面を泳いでいる姿はメダカと区別が付かない。
外来種には、国外と国内に分けられるが何れも深刻な問題を抱えている。カダヤシは日本固有種のメダカと拮抗するため、メダカの生態系の破壊が懸念される。また、アライグマなどの国外外来種も温暖化とともに活動を活発化させどんどんと生息域を北上させている。福井県には2006年頃には侵入したと見られ、その寄生虫が、環境省絶滅危惧種ⅠA(CR)アベサンショウウオに寄生しメタセルカリア結節症を引き起こしている。今後の動向をつぶさに調査し、適切な対応を取る必要がある。

MMPとマトリック微小環境

細胞間の狭い隙間をマトリックスという。いろいろな細胞が秩序正しく機能するには、適切がマトリックスの微小環境が必要である。マトリックスの環境を制御する因子にマトリックス・メタロ・プロテアーゼ(MMP)がある。MMPの生理的および病理的な役割を研究している。
結合組織増殖因子CTGFがADAM28の基質となり、CTGFの機能制御を行っていることは解明した。

高田型トノサマガエルの生物地理学研究

日本海側北陸上信越地方には珍しい高田型トノサマガエルがいる。背中の明るいストライプ:背中線がなく、腹面は真白ではなく、黒色系の斑点雲状模様がある。この特徴は、三方五湖に生息しているダルマガエル(国内ではナゴヤダルマガエルに含める。但し、我々は典型的なナゴヤダルマガエルと斑紋が異なることから別種としている)の特徴と似ている。
高田型の詳細な生物地理学研究は福井県のみで多府県での研究は殆どない。そこで、情報の極めてすくない富山県での調査を実施し、呉西地方に出現率10%ほどで生息していることを突き止めた。

迅速な大麻種子鑑別法確立のための研究

最近、国内における大麻乱用の問題が深刻化している。大麻服用の有無は、陶酔成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の尿中代謝物濃度を測定することにより確認することができる。これに対して、種子鑑別のための検査は現在のところ非常に時間がかかる上、必ずしも確実とは限らない。そこで我々は大麻種子の簡易鑑別キットの開発を目的とした迅速な鑑定法を確立するための基礎研究を行った。このキットが開発されれば、現在違法とされていない大麻種子についても、THCを含む品種に限定して法規制を導入することが可能となる。

亜ヒ酸の抗腫瘍効果に関する分子機構の解明

亜砒酸は急性前骨髄性白血病における分化誘導療法として臨床応用されているのみならず、血腫瘍や固形腫瘍における抗腫瘍性効果も期待されている。しかしその作用機序にはまだ不明の部分があり、その臨床応用や基礎解析の妨げとなっている。我々は、白血病細胞において亜砒酸による殺細胞効果におけるアポトーシスおよびミトコンドリア、活性酸素の関与についての解明のための研究を行っている。

アスピリン喘息における鼻茸のプロテオーム解析

アスピリン喘息患者のおよそ72%が鼻茸を合併しており術後の再発率も高い。これまでの組織学的解析から、アスピリン喘息症例の鼻茸組織は、副鼻腔炎の症例に比べ、好酸球浸潤が有意に増加しており、その重要性が示唆されている。しかし、鼻茸成因や再発率の高さの機序は不明である。我々は、網羅的解析法の一つであるプロテオーム解析を用いて、アスピリン喘息患者の鼻茸に関連する分子を検討し解析をすすめている。

分子生命化学(化学)研究室

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