福井大学医学部

麻酔・蘇生学

研究内容紹介

ロボット麻酔システムの開発と次世代手術室への展開

当科では、ロボット麻酔システムの研究開発から製品化、臨床応用、さらに手術室DXへの展開まで、基礎的な研究と臨床現場をつなぐ研究を進めています。テクノロジーの力を医療の質向上につなげ、より安全で効率的な、次世代の周術期医療の実現を目指しています。

1. 循環制御用ロボット麻酔システムの開発

当科ではまず、全身麻酔の基本となる「鎮静・鎮痛・筋弛緩」を自動的に制御するロボット麻酔システム1号機を開発しました。プロポフォール、レミフェンタニル、ロクロニウムの3種類の薬剤について、患者さんから得られる生体情報をもとに投与量を自動調節するシステムです。このシステムは、2023年7月に「全身麻酔用医薬品投与制御プログラム(販売名:全静脈麻酔支援シリンジポンプ制御ソフトウェア、AsisTIVA)」として発売され、現在では複数の施設で実際の麻酔診療に活用されています。

さらに、麻酔管理の次の段階として、血圧などの循環状態を自動的に調節する「循環制御用ロボット麻酔システム(2号機)」の開発に取り組んでいます。麻酔導入時などには血圧が低下することがありますが、2号機では患者さんの循環状態をリアルタイムに評価し、輸液や昇圧薬の投与量を自動的に調節します。これにより、麻酔科医による循環管理を支援し、より安定した麻酔管理の実現を目指しています。

2. ロボット麻酔システムを活用した手術室運営効率に関する研究

ロボット麻酔システムの開発・臨床導入を進める一方で、当科では、この技術を手術室全体の運営にどのように活用できるかについても研究しています。

現在の手術医療では、限られた医療資源の中で、安全性を確保しながら多くの手術に対応することが求められています。特に麻酔科医は、手術中の患者管理に加えて、複数の手術室の状況を把握し、緊急手術などにも対応する必要があります。こうした課題に対し、当科ではロボット麻酔とデジタル技術を組み合わせ、手術部運営そのものを変革する取り組みを進めています。

集中治療部の研究

集中治療部では、重症患者さんに対する治療の質の向上を目指し、日常診療から得られるデータを活用した臨床研究に取り組んでいます。集中治療室(ICU)に入室された患者さんの治療内容や経過を検討するとともに、全国規模のデータベースも活用し、より安全で質の高い集中治療につなげることを目指しています。

1. 日本ICU患者データベース(JIPAD)を活用した集中治療の質の向上

当院集中治療部は、日本集中治療医学会が運営する「日本ICU患者データベース(Japanese Intensive care PAtient Database:JIPAD)」に参加しています。JIPADは、全国のICUに入室した患者さんの病気や重症度、治療内容、治療経過などの情報を収集するデータベースです。

当院では、JIPADへのデータ登録を通じて、自施設の診療状況を全国のICUと比較し、集中治療の質を客観的に評価しています。また、蓄積されたデータは、重症患者さんに対する治療の実態や治療成績を明らかにするための研究にも活用されています。こうした取り組みを通じて、日々の診療を振り返り、より質の高い集中治療の提供につなげることを目指しています。

2. 敗血症に対して顆粒球吸着カラムを用いた患者の予後評価

敗血症は、感染症に対する生体反応によって臓器障害をきたす重篤な病態であり、集中治療を必要とする代表的な疾患の一つです。当院集中治療部では、敗血症に対して顆粒球などの血球を吸着する「アダカラム」を用いた血球吸着除去療法を行っています。

本研究では、アダカラムによる治療を受けた敗血症患者さんについて、治療前後の検査値や循環動態、臓器障害の程度、ICU在室期間、入院期間、転帰などを調査します。これらの臨床経過を検討することで、敗血症に対する血球吸着療法の安全性や有用性について明らかにすることを目的としています。日常診療から得られるデータを検証することで、敗血症に対する治療の可能性を検討し、今後のより良い集中治療につなげていきます。

情報公開文書

現在実施中の研究に関する情報公開文書は附属病院のページから閲覧できます。

麻酔・蘇生学研究室