福井大学医学部

脳神経外科学

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第10回福井脳神経外科歳末研究会

 12月8日(土)にザ・グランユアーズフクイにて、第10回福井脳神経外科歳末研究会を開催しました。今回は第10回を記念して特別講演を企画し、講師として松谷雅生先生 (埼玉医科大学名誉教授、埼玉医科大学国際医療センター名誉病院長、五反田リハビリテーション病院病院長)をお招きしました。

 最初に一般演題として、2施設から症例報告がありました (座長:福井大学 山内貴寛先生)。公立丹南病院 脳神経外科 磯﨑 誠先生が「アバスチン投与中に脳出血 (腫瘍関連出血)と肺塞栓症を来したIDH-mutant glioblastomaの一例」、福井大学 脳脊髄神経外科 東野芳史先生が「小児松果体部腫瘍の一例」について発表し、グリオーマや小児脳腫瘍の世界的権威である松谷先生から大変貴重なアドバイスをいただきました。

 メインの特別講演 (座長:菊田健一郎教授)では、松谷雅生先生に「WHO 2016分類後の成人gliomaの病態と治療」についてご講演いただきました。研修医の頃から形態学を学んで来た自分達にとって、分子生物学的診断に移行した2016年のWHO分類は衝撃的で、難解に感じました。しかし松谷先生は、難しいWHO 2016分類を我々にもわかりやすく説明して下さり、多くのデータと綿密な分析に基づいたグリオーマの治療方針を、グレード2からグレード4まで明解にご教示して下さりました。

 松谷先生の脳腫瘍診療に関するお仕事の集大成は、2016年12月発行の「脳腫瘍治療学」(金芳堂)に見ることができます。これだけ膨大な資料をお一人でまとめ上げられたことにも敬服しますが、個々の脳腫瘍について詳細かつ正確に、患者に対する説明の仕方まで記載されており、診断や治療に迷った際はこの教科書の中に答えを見出すことができます。当教室では10人以上の教室員が購入しました。日本人ならではのきめ細やかな内容に、松谷先生のお人柄が感じられる名著です。

 松谷先生のご功績は、診療・学問ばかりでなく文化・慈善活動においても大きく、その代表が日本脳神経外科学会管弦楽団 (Musica Neurochirurgiana)です。1987年に松谷先生と高倉公朋 東京大学名誉教授が中心となって結成した脳神経外科医によるオーケストラで、脳神経外科総会・コングレスにおける定期演奏や、国際学会などで演奏活動を続けています。このような楽団は世界的にも珍しいようで、他学会の代表が見学に来たこともありますし、2012年にはクラシックの本場ドイツの脳神経外科学会にも驚きを持って招待されました。最近では松谷先生のお考えに賛同した多くの団員が、小児脳腫瘍研究支援チャリティーコンサートにも参加しています。松谷先生ご自身が全国から団員を集め、20年もの間事務局を務められ、結成から30年以上経った現在もこの楽団が活動し続けていられるのは、ひとえに松谷先生のご功労の賜物です。

 このたびは初雪の降る寒風の中、遥々福井までお越しいただき誠にありがとうございました。今後とも福井大学脳脊髄神経外科にご指導を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

 小寺俊昭