福井大学医学部

脳脊髄神経外科学(脳神経外科学)

AVM専門外来

脳動静脈奇形(AVM)専門外来のご案内

脳動静脈奇形(AVM: Arteriovenous Malformation)は若年者の脳内出血を生じる病気で、その手術は脳神経外科の中で最も難しいものの一つです。まれな疾患でもあり、治療経験の豊富な外科医は多くありません。菊田はこの病気を専門の一つとして過去8年間に約40件の治療に関わり、2009年4月に福井に参りました。北陸においてAVMの治療、特に手術治療の可能な施設を知りたいとの意見が最近多く聞かれるようになったため、AVM専門外来を開設するに至りました。毎週金曜日に行っています。

脳動静脈奇形(AVM: Arteriovenous Malformation)とは

AVMは胎生約3週ごろ、赤ちゃんがまだお腹の中にいる間に発生する脳血管の奇形で、ナイダスという、動脈と静脈が直接結合した血管の塊が頭の中にできる病気です。遺伝性はありません。この奇形があると、通常は血液が動脈から脳組織を栄養して静脈に返る循環が、直接動脈から静脈に流れ込むため、脳組織に十分な血液が回らなかったり、てんかんを生じたり、静脈に動脈の圧力が長期間かかる結果、破裂し脳内出血を起こしたりします。AVMを放置しておくとどうなるかは、明確には分かっていませんが、未出血の方で年間2-3%の方が破裂して出血し、いったん出血した場合は最初の一年の再出血が6-33%と高く、その後の20年で年間2%の方が破裂すると報告されています。出血した場合の死亡率および重症後遺症が生じる率はそれぞれ約30%といわれています。

福井大学脳脊髄神経外科のAVMの治療方針

AVMの重症度分類

(大きさ)点+(周囲脳の機能的重要性)点+(導出静脈の型)点を合わせた点数をSpetzler-Martin grade(スペッツラ-・マーチン分類)と呼びます。

AVMの治療手段には①外科的切除、②定位放射線治療、③血管内治療の大きく三つがあり、薬で効果のあるものはありません。当科ではSpetzler-Martin grade(スペッツラ-・マーチン分類)が1-3点を治療対象とし、4点の場合は患者さんの状態に応じて治療を行うかどうかを個別に検討し、5点では治療の合併症が大きいため経過観察としています。

①外科的切除

全身麻酔下に開頭し、手術顕微鏡を用いてAVMの栄養血管を遮断します。栄養血管がすべて遮断されたことを術中血管撮影装置により確認した後、AVMを周囲脳から剥離します。完全に剥離されたことを再び術中血管撮影装置で確認し、最後に導出静脈を切断してAVMを完全摘出します。なお摘出に際しては手術中に正常脳組織が障害されていないかを、専任技師がMEP(運動機能)、SEP(感覚機能)、VEP(視機能)という特殊な脳波を用いてモニターし、できるだけ後遺症が出ないように努めています。

②定位放射線治療

弱い放射線を多方向から照射し、それらが重ねあわせて強い放射線をAVMに照射し、AVMの閉塞を行うものです。効果が現れるまでに数年かかり、小型のAVMで5年間に80%が消失するとされています。当科では治療の根治性と即効性を考え、外科的切除が可能なものは切除を優先し、外科的切除の危険性の高い小型AVMまたは、外科的治療でわずかに残存した場合に定位放射線治療を用いています。

③血管内治療

カテーテルを大腿動脈から脳内血管まで挿入し、そこからプラチナコイルや接着剤などを用いて、AVMを血管の中から閉塞するものです。これのみで完全閉塞させることは困難な事が多いため、外科的切除や定位放射線治療の補助手段として用いています。

いずれの治療を行うにせよAVMの治療には完全治療が求められます。つまり、半分だけ切除するとか、部分的に血管内治療を行うことは、返ってAVMの出血を助長する危険性があります。したがって、治療を行うのであれば、原則として完全にAVMを消失させるまで治療を行います。この点については患者さんに事前に十分説明し、理解していただいた後に治療を行っています。

脳脊髄神経外科学(脳神経外科学)研究室

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