福井大学医学部

脳神経外科学

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脳腫瘍に対する腫瘍治療電場療法(Tumor Treating Field)開始のお知らせ

 脳腫瘍のうち膠芽腫は手術、放射線、化学療法の集学的治療を用いてもコントロールが困難な腫瘍である。このたび、本邦において腫瘍治療電場療法が認可された。本治療法はイスラエルで開発された機器で、頭蓋内に位相を早い周期で交代させる交流電場を発生させ、腫瘍細胞の分裂時に力学的作用をきたすことにより治療効果を得ようとするものである。抗腫瘍剤などの副作用の多い治療法と異なり、日常生活も通常通りに行える。本装置は2006年に欧米で治験が開始され、当初は効果を懐疑的にみる脳腫瘍の専門家も多くいたが、再発膠芽腫で最良の化学療法と同等の治療効果を示すことが明らかになり(EF-11 study)、初発の膠芽腫に応用されるにいたった。さらに厳密な前向き試験で予後の改善(EF-14 study)が確認され、本邦では201712月より初発膠芽腫において保険承認がなされた。カルノフスキー パーフォマンス スケール70以上(自立した生活可能)など厳しい条件はあるが、当院では適応患者さんには積極的に紹介している。

 交流電場を頭蓋内に発生させるため、2対4枚の電極を頭皮に貼付することとなる。電場のパターンについてはMRI画像を特殊な解析を行い、電極貼付、機材の管理が必要となる。脳脊髄神経外科ではトレーニングを受けた医師(北井隆平、山内貴寛)が担当している。交流電場を印加する時間が長いほど治療効果が得られるため、日中でも出来る限り多くの時間、電極を貼付することが必要となる。写真に示すとおり、剃毛の上、白い電極を頭部に貼付しているので、事情のわからない方は驚くこともあるかと思われるが、医療者の皆さんには是非とも御理解いただきたい。福井県内では当院でのみ治療している(2018年12月現在)。

 北井隆平