精神神経疾患のニューロイメージングを本学高エネルギー医学研究センターとともに実施し、数多くの知見を世界に発信しています。近年では、子どものこころの発達研究センターとともに自閉スペクトラム症(ASD)・注意欠如多動症(ADHD)・被虐待児・摂食障害児者の脳構造や脳機能など多角的なアプローチにより神経基盤の解明を行ってきているほか、モデルラットにおける中枢神経系の神経可塑性および酸化ストレス定量評価にも取り組んでいます。基礎研究から臨床試験・医師主導治験も含めた臨床研究まで幅広く展開しています。
現在の多施設共同研究
- JST未来社会創造事業 「ニューロダイバーシティ環境下でのコミュニケーション双方向支援」 (研究代表者:大須理英子先生)、令和4~6年度
- 国際共同研究加速基金(帰国発展研究) 「自閉スペクトラム症における触覚と社会性の関係性の解明」(研究代表者:北田亮先生)、 令和3~6年度
- 基盤研究(A) 「相互主体性の神経回路・代謝解析ー自閉スペクトラム症の病態解明を目指して」 (研究代表者:定藤規弘先生)、令和6~10年度
- 基盤研究(B) 「10代の摂食障害を科学する!=脳とこころとからだの多角的アプローチ=」 (研究代表者:小坂浩隆)、令和6~9年度
- 基盤研究(B) 「タウ病理に基づく認知症の層別化と分子病態の解明」 (研究代表者:岡沢秀彦先生)、令和4~6年度
- 基盤研究(B) 「子どもの神経発達症・摂食障害へのセルフヘルプ遠隔認知行動療法と客観的評価法の開発」(研究代表者:濱谷沙世先生)、 令和4~6年度
主要研究テーマ
1.神経発達症の臨床研究
- 自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)の子どもから大人までの連続性についての検証
- ASDの脳画像研究
- ASD、ADHDのバイオマーカーの探究、視線計測研究による早期発見・介入
- ASDの社会的コミュニケーション能力の検証
- ASDの感覚特徴の探求
- 社会感受性の遺伝子研究
- 読字障害の学習効果
自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションの障害と想像力の障害(こだわり)と感覚の問題で特徴づけられる神経発達症です。長年、社会的コミュニケーションの苦手さについてMR機を用いた脳画像研究を中心に報告を行ってきました。ASDは共感性が欠如しているのではなく、似た性格の方には共感性を持っている可能性を示しました(Komeda et al., 2015)。近年では、ASD群の感覚特性(特に触覚、疼痛)について他施設と共同で臨床研究を行っています。当時大学院生だった幅田助教が、感覚特性と脳構造の関係性の特徴を報告し、国際プレスリリースを行いました(Habata et al., Transl Psychiatry, 11:616, 2021)。
2.ヒト高次脳機能および精神神経疾患の脳画像研究
- 健常人の高次脳機能の画像化
- 精神神経疾患の脳構造研究
- 課題を用いた精神神経疾患の脳機能研究
- 精神神経疾患の臨床核医学研究
- 脳波を用いた精神神経疾患における神経ネットワーク解析
- tDCS(経頭蓋直流刺激)を用いた高次脳機能の影響の解明、精神神経疾患への治療的アプローチ
3.被虐待者の臨床研究
- 不適切養育環境による表情認知の差異
- 被虐待児への音楽的介入の効果検証
4.摂食障害の臨床研究
- コロナ禍における摂食障害患者の疫学調査
- 摂食障害の脳画像研究の縦断的検証
- 摂食障害者への治療的介入試験
摂食障害の臨床研究を行っています。臨床症状と脳画像、身体各指標との関連などを多角的にアプローチしています。さらに、治療前後の縦断的検討も行っております。近年、コロナ禍において、一般人口の若者全体で体重が減少していることも我々の報告(Okazaki et al., Psychiatry Clin Neurosci, 2023)からわかっています。小中学生を含めた若い摂食障害の治療の有効性、新たな治療法の開発など行っています。
5.精神神経疾患の基礎研究
- うつ病モデルラットにおける中枢神経系の神経可塑性および酸化ストレス定量評価
- autoradiography (ARG)法によるマウス脳スライスのイメージング
6.精神療法研究
- 症例に即した認知療法の理論と実際
- オープンダイアローグの効果検証
- 気がかり妊婦への精神医学的介入