福井大学医学部

ゲノム科学・微生物学

2022年度 ひらめき☆ときめきサイエンス ようこそ大学の研究室へ ★新型コロナのPCR実験結果★

★新型コロナのPCR実験結果★

1.組分けの概要

講習者20名を10名ずつ2つのグループに分け、各グループの講習者10名をさらに2人一組の5組に分けた。そして、その5組に対し、検体1、2、3、4、5のサンプルを渡し、同じPCR反応液を2つ調製してもらった。つまり、各組2人のPCR検査の結果は同じようにならなくてはいけない。なお、検体1、2、3は新型コロナ陽性、検体4、5は陰性だということがあらかじめ判っている。陰性コントロールと陽性コントロールの反応液は教員が調製した。

2.陰性・陽性コントロールの結果

下図:グループA(上2つ)とグループB(下2つ)の結果

左:グループA、陰性コントロール

左:グループA、陽性コントロール

左:グループB、陰性コントロール

左:グループB、陽性コントロール

解説:陰性コントロールでは0.01未満の微弱な蛍光が検出される(グループBのグラフで観察できる)。しかし、このレベルの蛍光は二重鎖DNAの増幅とは無関係のものとみなすことができる。一方、陽性コントロールでは、陰性コントロールで観察されたバックグラウンドレベルの蛍光をはるかに超える強度の蛍光がPCRの後半で検出され、明らかに二重鎖DNAの増幅が認められる。

3.各検体のPCRの結果

3-1.検体1(陽性検体)
下図:グループA(上)とグループB(下)の結果

解説:グループAでは、予想通り、2人とも新型コロナ陽性の結果となった。一方、グループBでは、同じ「検体2」を反応液に加えたはずなのに、2つの反応液のうち片方でだけ陽性という結果であった。検体、プライマーF、プライマーRDNAポリメラーゼ溶液の4つのうちどれかを入れ忘れてしまうと陰性の結果が出てしまう。あるいはこれらを加えるときの容量を大きく間違えてしまった場合も。

3-2.検体2(陽性検体)
下図:グループA(上)とグループB(下)の結果

解説:予想通り、どの反応液でもコロナ陽性の結果となった。ただし、グループBではDNA増幅の速さに4サイクル以上の違いが見られた。

3-3.検体3(陽性検体)
下図:グループA(上)とグループB(下)の結果

解説:検体3は予備実験で陽性とわかっていたものだが、4人のうち1人(グループB)のみ陽性という結果であった。

3-4.検体4(陰性検体)
下図:グループA(上)とグループB(下)の結果

解説:本来、陰性の結果が出るはずの検体4。バックグラウンドの蛍光のレベルが陰性コントロールや他の陰性検体(検体5)と比べて一桁ほど高かった。原因は不明。

3-5.検体5(陰性検体)
下図:グループA(上)とグループB(下)の結果

解説:予想通り、コロナ陰性という結果であった。バックグラウンドの蛍光強度は陰性コントロールとほぼ同程度であった。

4.総評

・今回の実験結果より標的ウイルスの特徴的な遺伝子配列を、わずか数時間で増幅できたことがグラフから読み取れる。この実験法は、ウイルスの検出を目的とした検査だけでなく、ウイルス感染により人体のなかで作られる様々な分子(インターフェロンなど)の検出を目的とした研究使途にも用いられている。
・マイクロピペットを用いた実験をはじめて経験し、全体としては予備実験通りの結果を得ることができた。一方で偽陰性や擬陽性疑いの結果も得られており、この実験で熟練した手技を必要とすることがよく理解できたと思う。(定)
・今回の実験結果は、検体に新型コロナウイルスが存在するのかしないのか、はっきりさせる事の難しさを良く表していると思います。皆さんがピペットマンの操作に慣れていなかった事や、スタッフによる溶液を加えていく手順の説明が不十分であったことも結果に反映されているのかなと思いました。
・最近、PCR検査という言葉をよく耳にしますが、今回の実験でこの検査が高い技術の上に成り立っている事を実感してもらえれば幸いです。(千原)
(以上竹内)

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